国際交流基金理事長 梅本 和義

ご挨拶国際交流基金理事長梅本 和義

2022年10月、国際交流基金は設立50周年を迎えました。これまで当基金の活動を支えてくださった関係者の皆様、また、ともに国際交流の現場でご尽力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

50年前、日本は戦後の高度経済成長の中、国際社会における存在感を急速に高めていました。東京オリンピック(1964年)、大阪万博(1970年)、札幌冬季オリンピック(1972年)など大きなイベントが開催され、世界第2位の経済大国になった頃でした。

こうした時代背景の下、1972年10月2日、「我が国に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解を増進し、及び文化その他の分野において世界に貢献し、もって良好な国際環境の整備並びに我が国の調和ある対外関係の維持及び発展に寄与すること」(独立行政法人国際交流基金法第3条)を目的として、国際交流基金が設立されました。以来、日本を取り巻く国際情勢の変化に応じながら、1.文化芸術交流、2.海外における日本語教育、3.日本研究・国際対話の各分野で、諸外国との文化交流に取り組んでまいりました。

このウェブサイトは、当基金の50年のあゆみを振り返るとともに、これまで私どもの事業に様々な形でご協力いただいた方々の生の声をご紹介しながら、国際文化交流の意義や今後のあり方を皆様とともに考えるきっかけとなれば、との願いで制作しました。残念ながら、半世紀にわたる活動のすべてを網羅することはできませんが、その代表的なものが掲載されています。ぜひ一つでも多くの物語をご高覧いただき、長年にわたる日本と世界の交流の深みと広がりに触れていただければ幸いに存じます。

この50年間、グローバル化の進展とともに、世界の日本に対する理解は大きく進んできました。例えば、今日、海外の日本語学習者は概ね380万人を数え、1970年代末から約30倍の伸びを記録しています。かつて日本文化への関心が専門家や愛好家に限定されていた状況と比較し、世界中の広範かつ多数の人々が日本文化の様々な側面に関心を持ち、また、楽しんでいる姿を見るとき、まさに隔世の感を禁じえません。

一方で、今後の道のりは決して楽観できるものではありません。この2年あまり、コロナ禍によって私たちの日常は激変し、日本と世界の人的交流も大きく制限されました。また、世界各地での自然災害の頻発や、国際秩序の根幹を揺るがす事態の発生など、胸に突き刺さるような光景が、日々、メディアによって報じられています。

しかし、このような激動の時代においてこそ、文化交流の真価が問われていると言えるのではないでしょうか。多極化し、不透明な要素が増している国際社会にあって、日本が世界の人々と絆を深めていくことは、以前にも増して重要となっています。また、多くの国がソフトパワー外交への関心を高め、この分野においても競争が激しくなってきており、今後も日本文化の存在感を維持していくためには、従来以上の努力を払わなければならないと感じています。

国際交流基金は、これからも日本と世界の人々が相互の理解と信頼を深めるための触媒の役割を果たし、日本と世界の良好な関係を築くための努力を重ねる所存です。今後とも皆様のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後になりましたが、このウェブサイトの制作にあたり、インタビューをご快諾くださり、数々の貴重な情報を提供してくださった多くの方々に篤く御礼申し上げます。

2022年10月
国際交流基金
理事長 梅本 和義